「限界利益」というと、来年度の見込み利益や目標利益の計算で使用します。
今回は「限界利益」の正しい使い方について、記載します。
「限界利益」は
「価格の見積り」
「売上価格の決定」
「見積書作成」
の場面で使用します。
改めて、見積りの「価格」「売上単価」の算出式は
価格 = 材料費 + 加工費 + 一般管理販売費 + 利益
です。
「見積り」についての詳細は、
記事「儲かる見積原価計算」
をご覧ください。
さて、上記計算式にて算出した価格を、見積書に記載してお客様に提示します。
すると、多くの場合、
- もう少し、安くならないのか
- 他社はもっと安いよ
- 今後は他社から買うよ(失注)
となります。
他社との価格差が大きいと、最悪の場合、突然、お客様から「見積り依頼」も来なくなります。
このような事に対応するため、通常、「値引き」した見積り、価格を再度、提示していると思います。
これで、受注できます。
ここで「問題」は、「いくら値引きしたのか」です。
自社にコスト競争力がない場合は「値引き」するしかありませんが、「いくらまでなら、値引きしても大丈夫か」になります。
この「値引き」の金額、値引額、値引率を決定するために「限界利益」が必要になります。
記事「限界利益とは」
正確に言うと、「限界利益」の考え方を応用します。
改めて、見積りの「価格」「売上単価」の算出式は
価格 = 材料費 + 加工費 + 一般管理販売費 + 利益
です。
上の算出式から、「値引き」できそうなものは、まずは「利益」ですね。
「利益」は「利益率」にすると5%程度(統計上)です。5%の「値引率」で、買ってもらえれば、この話はここで終わりです。
利益が確保できないのは、残念ですが、以下に続きます。
しかし、市場価格や競合の価格が更に安い、低価格の場合には、更に以下の算出式のどこを「値引き」すればいいのかが、この記事の本題です。
価格 = 材料費 + 加工費 + 一般管理販売費 + 利益
そうです。「限界利益」を応用します。
「変動費」は、生産数、量に比例して掛かる費用ですので、「値引き」できません。
例えば、材料費や電力費を「値引き」すると、翌月の材料費と電力費を払えなくなってしまいます。資金ショートで、即、倒産の危機です。
そうです。「固定費」を「値引き」の対象にします。(それしか、ありません)
受注を獲得するために、「どの固定費」を「いくら」まで値引きしても、経営上、耐えられるでしょうか。
答えは「減価償却費」です。
「減価償却費」には、製品を加工するメインの加工設備の減価償却費、各設備が共通で使用している設備の減価償却費、車両運搬具、建物もそうです。
この減価償却費を算出するのに「法定耐用年数」を使用している場合には、自社の実態に合う「経済耐用年数」を使用して、算出します。これで価格が下がります。
次に、自社の資金繰りに影響が出ない範囲内で、また自社の資金に余裕があるなら「経済耐用年数」を更に長くして、少ない減価償却費にします。
そうです。「経済耐用年数」は実際の資金回収年数ですので、実態に合わせた年数なら、問題ありません。
これは、受注獲得のために「戦略的に」、
資金の回収を伸ばす
又は
貯蓄資金で補填する
ことです。
このように、先ずは受注獲得が先決です。但し、上のように値引きの限界を把握しておく必要があります。
「標準原価計算」商品のご案内
加工組立産業のお客様
金型など、一点物のお客様
受注獲得後は、値引き分を「儲かる改善」で改善します。
コメント