前回は「標準原価計算の基本」でした。
今回は「加工費」の「レート」と「時間」です。
前回より、標準原価の「加工費」は、以下の算出式で計算します。
工程加工費(円/個)= 設備費(円/個) + 労務費(円/個)
設備費 = 設備費レート(円/時間) × 設備の加工時間(時間/個)
労務費 = 労務費レート(円/時間) × 人の作業時間(時間/個)
ある製品が、2つの工程で加工されて完成する場合は、「工程加工費1」「工程加工費2」として別々に算出し、加算します。
製品Aの加工費(円/個) = 工程加工費1(円/個) + 工程加工費2(円/個)
それでは、「レート」と「時間」は、どのように算出するのか、です。
まずは、設備費として「設備費レート」と「設備の加工時間」について、説明します。
商品の標準原価・価格見積計算には「設備費」の算出例が付属しています。
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設備費レートの算出
設備費レートは、生産設備のレートで、製品を生産、加工する際に、その工程、設備で掛かる費用を「1時間単位」や「1分単位」「1秒単位」に換算した、単位時間あたりの費用です。
なので、設備費レートは「工程別レート」として、工程や設備毎に算出、設定します。(工程順序の単位)
設備費レートの費用で、代表的なものには以下の費用があります。
- 減価償却費
- 電力費、ガス費、水道光熱費などのエネルギー費用
- 消耗工具費(刃具、治具、工具など)
- 設備修理費
- 製造補助費
- 固定資産税・保険料
など。「製造原価明細書」の科目と同じですね。
これらの費用を、工程別に年間の金額として捉えます。
そして、その費用を、設備の「年間稼働時間」で割ったものがレートです。
上の説明を数字で表すと、下表のようになります。
[工程別レート算出表]
工程名 | 年間 稼働時間 (時間/年間) |
減価償却費 (円/年間) |
電力費 (円/年間) |
費用合計 (円/年間) |
レート (円/時間) |
---|---|---|---|---|---|
工程1 | 1600 | 1,000,000 | 200,000 | 1,200,000 | 750 |
工程2 | 2000 | 2,000,000 | 400,000 | 2,400,000 | 1200 |
工程1のレートを計算式で書くと
(1,000,000 + 200,000) ÷ 1600 = 750(円/時間)
となります。
工程1のレート(単位時間あたりの費用)は
750(円/時間)
です。
尚、生産している製品や設備によって、「50円/分」や「2円/秒」など、時間の単位が変わります。
設備の加工時間
設備の加工時間は、製品1個の加工時間として「製品別」に設定します。
レートは「設備別」でしたが、生産、加工する加工時間は、通常、製品によって違います。
この時間のことを「MT(マシンタイム)」や「PT(ピッチタイム)」と言います。
純粋に、設備が加工、生産している時間で、ベルトコンベアなどの装置が搬送している時間は、対象外です。
付加価値のある時間で、変形、変質、組付けを行っている時間です。搬送は物が動いているだけなので、変形、変質はありません(付加価値は無い)。
具体的には、生産している設備に行き、製品毎にストップウォッチで計測します。
この計測した時間を一覧表でまとめて「標準時間管理表」などとして管理します。
設備の加工時間の例として、小さい部品の加工では、製品1個の加工時間は、10秒や80秒程度ではないでしょうか。
通常、この時間を使用して、生産計画(時間×生産数)を行い、納期管理や残業、人員配置にも使用します。
また、時々、再度、時間計測を行い、時間に遅れがある場合は、要因を調査します。
品質悪化や設備故障の事前現象として疑い、未然防止に繋がります。
設備費の算出
本ページの最初に記載した通り、設備費は以下の算出式で計算します。
設備費(円/個) = 設備費レート(円/時間) × 設備の加工時間(時間/個)
それでは、上記で計算したレートを基に、工程1の設備費を算出してみましょう。
工程1のレートは、750(円/時間)でした。
この工程1で、製品Aを加工するのに3分間、掛る場合の設備費は、
37.5(円/個) = 750(円/時間) × 3(分/個)
( 12.5円/分 = 750円/時間 ÷ 60 )
製品Aを工程1で加工した場合の設備費は、
37.5(円/個)
です。
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「設備費」の説明は以上です。
この設備費に、次回の「労務費」を加算すると、製品Aの「加工費」が算出できます。
次回は、労務費として「労務費レート」と「人の作業時間」についてです。