さて、見積りの価格は、以下の計算式で算出します。
価格 = 材料費 + 加工費 + 一般管理販売費 + 利益
それでは、加工費の「算出式」ですが、これは「標準原価の加工費」と同じ算出式です。
「儲かる標準原価計算」の基本をご覧ください。
念の為、「加工費」の計算式を以下に記載しますが、同じ式になります。
加工費(円/個) = 段取り費用(円/個)+ 工程加工費(円/個)
計算式は同じでも
見積原価計算の加工費は、標準原価計算と同じ計算式ですが、中身に工夫が必要になります。
特に、下記「工程加工費」の設備費レートを戦略的に設定します。
工程加工費(円/個)=
(設備費レート(円/時間)× 設備の加工時間(時間/個))+
(労務費レート(円/時間)× 人の作業時間(時間/個))
「戦略的に設定」とは、
まず、「儲かる標準原価計算」の原価は、「標準的な原価」で、その会社の実態に合った原価です。
「このくらいで作れる、生産できるはずの原価」ですので、現状を表した原価となります。
これから算出する原価は、見積書に使用する「見積原価」ですので、現状ではなく、
- 受注できた場合の未来の原価
- 受注を勝ち取るための戦略的な原価
になります。
よって、「設備費レート」の下記の2項目については、受注に向けて、戦略的に設定します。
- 年間稼働時間
- 減価償却費
「儲かる標準原価計算」の「設備費レートの算出」を見てみる。
年間稼働時間
年間稼働時間は、設備費レートを算出する場合の「分母」になるため、稼働時間が多い場合は、レートが下がり、安くなります。
年間稼働時間は、設備毎に設定しますが、「標準原価」では、現在の稼働率を設定します。
例えば、稼働率が100%の場合の「年間稼働時間が2000時間」だとしたら、「稼働率が80%の場合は、1600時間」です。
現在の稼働率が80%でも、受注を取ることが出来れば「稼働率が95%」になるなら、稼働率95%の年間稼働時間(1900時間)で、設備費レートを算出します。
[例]年間稼働時間の違いによる、設備費レートの値
原価の 種類 | 年間 稼働時間 (時間/年間) | 減価償却費 (円/年間) | 電力費 (円/年間) | 費用合計 (円/年間) | レート (円/時間) |
---|---|---|---|---|---|
標準原価 | 1600 | 1,000,000 | 200,000 | 1,200,000 | 750 |
見積原価 | 1900 | 1,000,000 | 200,000 | 1,200,000 | 631 |
これで、低コスト、安い価格の見積書を作成することができます。
減価償却費
減価償却費も受注に向けて、戦略的に設定します。
例えば、機械加工の設備の法定耐用年数が「10年」とした場合に、
1000万円の設備の場合の減価償却費は
減価償却費 100万円 = 1000万円 ÷ 10年
です。
しかし、機械加工の設備は、15年、20年(要、保全)と使用できます。
この年数を「経済耐用年数」と言いますが、実態の「20年」とした場合に、
1000万円の設備の減価償却費は
減価償却費 50万円 = 1000万円 ÷ 20年
です。
このように「経済耐用年数」を、戦略的に何年に設定するかで、
低コスト、安い価格の見積書を作成することができます。
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耐用年数、経済耐用年数については、以下の記事が参考になります。
次回は、「儲かる見積原価計算」の「一般管理販売費の計算」です。