前々回は「標準原価計算の基本」でした。
前々回より、標準原価の「加工費」は、以下の算出式で計算します。
工程加工費(円/個)
= 設備費レート(円/時間) × 設備の加工時間(時間/個)
+ 労務費レート(円/時間) × 人の作業時間(時間/個)
それでは、「レート」と「時間」は、どのように算出するのか、です。
前回は「設備費の算出」でした。
今回は、労務費として「労務費レート」と「人の作業時間」について、説明します。
商品の「標準原価・見積計算」には労務費の算出例が付属しています。
加工組立産業のお客様
労務費レートの算出
労務費レートは、人、作業者のレートで、製品を生産、加工する際に、その工程、設備で掛かる労務費を「1時間単位」や「1分単位」「1秒単位」に換算した、単位時間あたりの費用です。
労務費の費用で、代表的なものには以下の費用があります。
- 給料
- 労災保険や健康保険などの各種保険(会社負担分)
- 賞与、退職金
です。
これらの費用を、作業者の雇用形態別に年間の金額として捉えます。
正社員、期間社員、パートなどの雇用形態で、給与、賞与などが違いますので。
そして、その費用を合計して、会社の「年間稼働時間」で割ったものがレートです。
上の説明を数字で表すと、下表のようになります。
[雇用形態別レート算出表]
雇用形態 | 年間 稼働時間 (時間/年間) |
年間 労務費合計 (円/年間) |
レート (円/時間) |
---|---|---|---|
正社員A | 2000 | 6,000,000 | 3000 |
正社員B | 2000 | 4,000,000 | 2000 |
パート | 1440 | 1,000,000 | 694 |
正社員Aのレートを計算式で書くと
6,000,000 ÷ 2000 = 3000(円/時間)
となります。
正社員Aのレート(単位時間あたりの費用)は
3000円/時間
50円/分
0.83円/秒
です。
商品には労務費レートの算出例が付属しています。
加工組立産業のお客様
人、作業者の作業時間
レートは「雇用形態別」でしたが、人の作業時間は「製品別」に設定します。
製品1個を加工するのに掛かる、人の作業時間(時間/個)で、ストップウォッチで計測します。
人、作業者の作業時間をどのように捉えるのかが、今回のポイントです。
●手動ライン、工程の場合(昔のボール盤など)
加工前の部品(ワーク)を、作業者が加工設備にセットして、作業者が加工する場合は、セットする時間、加工している時間、取り外す時間の合計です。
●半自動ライン、工程の場合(古いNC旋盤など)
加工前の部品(ワーク)を、作業者が加工設備にセットして、加工は設備が行う場合で、セットする時間、取り外す時間の合計です。
加工する物によりますが、小さい物でしたら、人の作業時間は合計4~6秒程度です。
この時の設備が加工する時間は「設備の加工時間」で、前回説明しました。
●自動ライン、工程の場合(ローダー機能付きNC旋盤など)
設備への加工部品(部材、ワーク)のセットや加工はすべて、設備が行います。
人の作業時間は、加工前の部品(ワーク)と加工完の部品を箱単位で運搬する時間になります。
このラインの場合は、通常、1人の作業者が複数のラインを担当していますので、設備の加工時間をラインの数(持ち台数)で割って求めます。
[例]加工時間 20秒/個 ÷ 持ち台数 5台/人 = 人の作業時間 4秒/個
この時の設備へのワークセットや加工する時間は「設備の加工時間」で、前回説明しました。
単に、歩いている時間、物を探している、見ている時間などは、対象外です。
付加価値のある時間で、変形、変質、組付けを行うのに、どうしても必要な時間です。ただ歩いているだけなら、変形、変質に寄与していません(付加価値は無い)。
具体的には、生産している設備に行き、製品毎にストップウォッチで計測します。
この計測した時間を「標準時間管理表」や人員配置図でまとめて管理します。
この人の作業時間は「儲かる改善」で改善し、持ち台数を増やすなど、一人でなるべく多くの作業を行うように改善します(多能工化)。
労務費の算出
本ページの最初に記載した通り、労務費は以下の算出式で計算します。
労務費(円/個) = 労務費レート(円/時間) × 人の加工時間(時間/個)
それでは、上記で計算したレートを基に、工程1の労務費を算出してみましょう。
正社員Aのレートは、50(円/分)でした。
ある工程で、製品Aを加工するのに2分間、掛る場合の労務費は、
100(円/個) = 50(円/分) × 2(分/個)
製品Aを正社員Aが加工した場合の労務費は、
100(円/個)
です。
「労務費」の説明は以上です。
工程加工費の算出
「儲かる標準原価計算」の工程加工費の算出式は、以下になります。(儲かる標準原価計算の基本)
工程加工費(円/個) = 設備費(円/個) + 労務費(円/個)
前回、算出した製品Aの設備費と、上記で算出した製品Aの労務費を加算すると、製品Aの工程加工費が算出できます。
製品Aの工程加工費は、
137.5(円/個) = 37.5(円/個) + 100(円/個)
となります。
今すぐ「標準原価・見積計算」で自社の労務費を算出いただけます