よく、「たくさん造ると安くなる」「大量生産だから安い」と言いますが、「何が、どの程度」安くなるのか、ご存じですか?
「感覚的に安くなる」と思っていませんか?
ここで、問題ですが、
●1個だけ生産する
●1000個を連続して生産する
では、
どちらの「原価が安く」なると思いますか?
どちらの方が「費用が掛からない」と思いますか?
答えは、「同じ」原価、費用です。
1個生産するのも、1000個生産するのも、「1個あたりに掛かる費用は同じ」だからです。
1個生産するのに掛かる、電力費やガス費、刃具、ドリルなどの消耗工具、補助材料費は同じです。
1個生産するのに使用する、工程、設備の加工時間も同じです。
1個生産するのに掛かる、人の作業時間も同じです。
1個でも、1,000個でも、1個あたりの生産で見ると同じ費用、原価です。
1,000,000個生産しても、安くなりません。
それでは、なぜ、「安くなる」と思う人が多いのでしょうか?
答えは、以下の3つのキーワードです。
1.作業の慣れ
2.段替え費用
3.値引き
です。
1.作業の慣れ
人間は、同じ作業を繰り返す間に作業に慣れてきて、30秒掛かっていた作業が、20秒でできるようになります。
これなら、同じ物でも安く速く生産できますので、安くなります。
しかし、ほとんどが自動ラインです。設備が加工、生産していて、人間は加工していませんので、「作業の慣れ」は当てはまりません。安くなりません。
2.段替え費用
1つの工程で、1つの製品だけを生産している専用ラインの場合は、当てはまりません。
1つの工程で、複数の製品を生産している場合は、生産する製品を切り替える時に、設備を止めて、段替えを行います。
この段替えに掛かる費用は、段替え間の生産数で変わります。100個より1000個の方が、段替え費用が安くなります。(1個だけの生産は現実的では無いので、考えないようにします)
しかし、20分間の段替えに掛かる段替え費用は幾らでしょうか。
ここで、段替え費用を比較してみましょう
2直稼働の会社で、1000万円の設備を20分間、段替えした時の段替え費用(超、概算)は、下表の通りです。
生産数 (個) |
段替え費用 (円/個) |
|
---|---|---|
A | 100 | 15 |
B | 500 | 3 |
C | 1000 | 1.5 |
D |
10000 | 0.15 |
100個と1000個では、10倍の差がありますが、いっても1.5円や3円の世界です。
この金額をどう見るかですが、業界や製品にもよりますが、1個1円の差です。
3.値引き
「たくさん買ってもらえるなら、安くします」よくある会話です。
この「安く」するのは、何を安くするのでしょうか?
これまで記載した通り、たくさん生産しても1個あたりのコスト、原価は変わりません。
コスト、原価を安くしてしまうと、生産すればするほど、赤字になります。
「安くする」対象は「利益」です。1個あたりの「利益」を減らしているのです。
100円/個の商品、製品で、利益率が5%の場合の「利益」は5円/個です。
例えば、100個の場合の利益5円を、1000個なら3円に値引きします。
100個の場合の利益:100個×5円=500円
1000個の場合の利益:1000個×3円=3000円
値引きしても、500円の利益が3000円になるなら、安くしてでも注文を取ります。
まとめ
たくさん造る、大量生産で安くなるのは「利益」の減額です。
ここで、大切なのは「大量生産でもコスト、原価は変わらない」ということです。
みなさんは、自分の会社の商品、製品1個のコスト、原価が分かっていますか?
コスト、原価が分からないと「利益」も分かりません。
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