企業、特に製造業では、原価低減やVE、VAと言って、原価を下げる活動が行われます。
利益確保が難しい状況にあります。皆さんの知恵と工夫で改善をお願いします。
と、経営層が社員全員に訴えます。
これは赤字の回避、目標利益の確保など、儲けるために行います。
すると、多くの社員から、実現性のある多くの改善(案)が集まります。
しかし、
- 実際には、あまり儲かりません
- 損益計算書の営業利益は、大して増えません
- 原価低減の効果金額(合計)と同じ程度の利益増に到底、及びません
という会社が、ほとんどではないでしょうか。
何故、だと思いますか?
その理由は大きく3つです。
- 低減額、効果金額の算出方法が正しくない
- 改善(案)の分類、集計の仕方が悪い
- 投資額と低減額の計算があまい
それぞれの内容について、「儲からない理由」と「解決策」を記載します。
1.低減額、効果金額の算出方法が正しくない
多くの会社では、原価低減(案)、改善(案)、改善提案を募る時に、提案用紙に改善低減額、効果金額を記載します。
この改善低減額、効果金額の計算方法が正しくありません。
改善(案)の多くは、作業時間の短縮です。
例えば、「○○の作業を20分短縮する」や「□□の加工時間を20秒短縮する」という内容です。
この短縮時間にレートを掛けて、効果金額を算出していると思います。
この時の「レート」を「全社平均レート」を使用していると正しく計算できません。
「レート」は、工程によって大きく異なります。工程によっては2倍、3倍の差があります。
正解は、「工程別」のレートを使用して計算します。
この時に使用する「工程別レート」が、標準原価のレートになります。
「標準原価のレート」については、「儲かる標準原価計算の基本」をご覧ください。
2.改善(案)の分類、集計の仕方が悪い
改善には、すぐに今年の利益に貢献するものと、2、3年、更には中長期的でないと利益に効いてこないものがあります。
まず、この事が分かっていません。何でもかんでも改善したら、すぐに利益に効くと思っていませんか。
例えば、前項の例のように「作業時間を20分削減」しても、20分間の労務費は減らないからです。
常に残業しているなら残業分の労務費が減りますが、そうでなければ、実際に労務費が減るのは、1人分の給料が無くなったときで、終身雇用の日本では自然退職者があった時、新規雇用を止めた時、派遣社員の更新を止めた時です。
更に、1人分=8時間の改善が無いと、1人分の人員減にはなりません。
且つ、皆が削減した時間(例:20分間)を使って、新しい作業を行い、やっと1人分=8時間分の作業を無くすことができます。
どう考えても、1年間で出来ることではありません。2、3年、更には中長期的に捉える必要があります。
このように、改善(案)は中長期的に組織や会社全体の人員配置を捉え、何年後に効いてくるのかを、ちゃんと考える必要があります。
小手先で、ただ社員にお願いするだけでは、ダメなのです。
実際の利益に何年後に効く改善なのか、効果のある年毎に分類して管理し、中長期的に利益を計算します。
3.投資額と低減額の計算があまい
これも良くあります。
例えば、一部又は全部の搬送を自動化すると、設備の加工時間が20秒短縮される。などの改善で、自動化装置の投資額(例:300万円)と20秒削減を、ちゃんと計算していません。
300万円の投資なので設備費レートは高くなりますが、設備の加工時間が20秒短縮されます。
この関係を金額で確認する必要があります。
[設備費レート × 設備の加工時間]で、改善前と改善後の金額を比較します。
この時に使用する「設備費レート」「加工時間」が、標準原価です。
「標準原価」については、「儲かる標準原価計算の基本」をご覧ください。
最後に
せっかくの改善(案)、良いアイデアを、ちゃんと活かし、社員への利益貢献度が分かる取組みが必要です。
利益貢献度が分かるとやりがいが増し、更に、良い改善(案)、良いアイデアが生まれ、やがてコスト競争力のある強い会社になります。
反対に、どうせ改善(案)、アイデアを出しても、会社は全然、儲からないし、評価もされないと思い、改善が進まない、儲からない会社になります。
AI、IoTでは改善はできません。アイデアは人間からしか生まれません。
そのためには「標準原価」が必要です。
「標準原価」がない会社は、今すぐ、商品の「標準原価計算」を始めましょう。
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