「儲かる実際原価計算」を計算するためには、実務上、下表の情報が必要となります。
一般的な「帳票名」と帳票に「記載されるべき情報」を記載しました。
「儲かる実際原価計算」に必要な情報一覧
No. | 帳票名 | 帳票への記載内容(情報) |
---|---|---|
1 | 減価償却明細 | 加工設備の資産管理番号と減価償却費、工程記号の関連付け |
2 | 生産実績表 | 実際に生産した、加工設備の工程記号、製品番号毎の生産数と標準加工時間 |
3 | 売上実績表 | 得意先番号・製品番号毎の売上単価と売上数量 |
上表の情報が、会社や生産現場で記録、管理されていない場合には、先ずは、情報の記録から始める必要があります。
これらの情報を収集するEXCELシートを公開しています。無料でダウンロードできます。
これらの情報は、原価計算以外に、現場改善にも使用できますので、無駄にはなりません。
上表以外に、「製品番号の一覧」、「工程記号(番号)の一覧」、「損益計算書」が必要になりますが、通常は社内で管理されていると思います。
万一、社内に無い場合でも、直ぐに準備できます。
1.減価償却明細
工程で使用している設備の「資産管理番号」と、その資産の当期(原価計算期間)の「減価償却費」と「工程記号」を関連付けた一覧表です。
ここで対象の設備、資産は、製品の加工、組立など、加工、組立に直接使用する設備群で、「工程記号」で表される資産が対象となります。
目的は、「工程記号」と「減価償却費」の関連付けです。
多くの場合、一つの工程記号に複数の資産、資産管理番号が関連付けられます。
例えば、自動機のNC旋盤やマシニングセンター、プレス機、○○加工機では、加工前のワークを自動的に投入する「パーツフイーダ」や、加工後の製品を取り出す「ロボット」が、一つの工程、コストセンターで使用されていることが多いからです。
半自動機や手動ラインの場合は、一対一になることが多いかと思います。
[例]
■対象の資産
材料供給装置、加工・組立機本体、加工品排出装置 など
■対象外の資産
エアーコンプレッサー、フォークリフト など
通常、「資産管理番号」と「資産名」「減価償却額」は、固定資産台帳に記録されています。会社の会計ソフトから、CSV形式でファイル出力することで入手できます。
会社の経理の方、若しくは、あなたの会社を担当している税理士に聞いてください。すぐに分かります。
入手したCSVファイルをEXCELで開いて、「工程記号」を追加します。
もちろん、CSVファイルを使用せずに、一から入力して作成してもOKです。
「減価償却費」については、以下のトピックスもご覧ください。
2.生産実績表
「どの工程で、どの製品を、何個、生産したのか」を集計した、実績表になります。
工程記号、製品番号毎の「生産数」と「標準加工時間」を準備します。
「生産数」は、原価計算期間に生産した生産数になりますので、事前に原価計算期間で集計が必要になるかと思います。
「標準加工時間」は、いわゆる「標準時間」です。標準時間とは、ある製品を加工、生産する時に、その製品1個を加工、生産するのに掛かる「加工時間」のことです。
「A製品をX工程で加工する場合は、40秒掛かる」という時の「40秒」のことです。
実際の現場では、「MT」や「CT」、「ピッチタイム」と言います。
「標準加工時間」が整備されていない場合は、ストップウォッチで加工時間を計測します。
最近のIoTでは、この生産数と合わせて設備が停止した時間を自動的に記録する装置が話題ですね。(参考 中小企業のIoT(NHK))
3.売上実績表
「どの得意先に、どの製品を、何個、幾らで販売したのか」を集計した、実績表になります。
製品毎の利益、得意先毎の利益を算出し、分析するために必要になります。
得意先番号、製品番号毎の「売上単価」と「売上数量」を準備します。
「売上数量」は、原価計算期間に販売した生産数になりますので、事前に原価計算期間で集計が必要になるかと思います。
「売上単価」が原価計算期間で変更になっている(複数の単価が存在する)場合は、どちらかの単価を採用してください。保守主義の観点から、安い単価を採用し、利益を少なく計算する方が良いかと思います。
ちなみに、この売上単価を算出、決定するための計算が「見積原価計算」です。
参考 見積原価計算の実務
次のページ、「実際原価計算の「期間」と「工程」」もご覧ください。